二千十四年 十月
私は町内放送を聴いていた
潮の匂い
金木犀の匂い
秋めいたこの町の匂いは私の心を落ち着かせる
湯船につかるあの三秒間みたいな
ふと思い出したことがある
幼い頃
兄と手をつないで歩いた堤防
今日と同じような秋の日に
私と兄は突然に
クジラ
を見た
大きさはうまく言えないのだが
とにかく大きくて
くらいの大きさというべきか
私はクジラと目が合った
そこには 喜びも 怒りも 悲しみも 無い様に見えた
幼いながらに思ったこと
ああ、クジラも私も同じなんだな
漠然とそう思ったのだ