24才くらいの時
岐阜から東京にやってきて
とにかく沢山ライブをしていた
音楽を生業にする事だけを考えていた僕は
色んな場所でとにかく沢山歌い続ける事に1つの価値を見いだしていた
そんな日々の中で 僕の 歌声は日に日に力強くなっていた
池袋や新宿の路上ライブでは 道行く人に届くようにと力強く歌ったし
ライブハウスでは 目の前の人の心の奥まで届けと言わんばかりに力強く歌った
そんな最中 当時のスタッフの方が 知り合いのボイストレーナーを紹介してくださった
著名な先生で
レッスン料も高かったのだが スタッフの方が融資で出してくれて
ありがたいことに 月に2回のレッスンを受けさせてもらった
渋谷の裏通りにあるビル
レッスンスタジオにいらっしゃったのは
小柄なおばあちゃん だった
レッスンが始まるやいなや
とりあえず歌ってみて
と おばあちゃん
僕はギターを弾きながら 海の恋文 という曲を歌い始めた
Aメロを歌い終えるくらいのところで
すとっぷ!!
とドSな声色でおばあちゃん
それ あんたの声じゃないよ!!?
と 叱責 のおばあちゃん
僕はよく意味がわからなかった
あんたの声じゃない? 僕の声ですけど?
この曲の歌詞朗読してみなさい
と おばあちゃん
僕は詞を声に出して朗読しました
その声が あんたの声だろ!!?
力強く 歌い続けていた僕の歌はもはや 僕の声を加工したものになっていたんだと 気が付きました
世の中のそれぞれの声
それぞれに魅力があり
みんな唯一無二の素材を持っている
あとはそれに どんな言葉を付けて
どんなメロディーに乗せるか
歌を歌うときは オンリーワン の素材を大切にして歌えば
きっと素敵な歌になっていると思います
それから おばあちゃん と訓練したのは
歌詞を一行読んで その声のまま メロディーに乗っていく 訓練
自分の声で 自分の言葉を伝える歌を歌う為の訓練でした
腹式呼吸 とか 音程の取り方 も大切なことに間違いはないのですが
根底の考え方をおばあちゃんに教えてもらった
うたをうたうときは
自分の声で歌う